思い出の井ノ浦

父の実家は愛媛県佐多岬半島にある井ノ浦という村だ。
祖父母はみかん農家兼漁業をしており、父が小さい頃からとても忙しくしていたと聞いている。
父はみかんを籠で担いで運んだり、主に力仕事の手伝いをしていたそうです。

私が小学校くらいの頃夏休みに、祖父の漁船に乗せてもらい漁に連れて行ってもらった事がある。
船は漁港を離れ、漁場まで進む。
祖父母は恐らく底引網漁をしていて、祖父が船を運転して祖母が網を海に放っていた記憶がある。
小さな船だったが、引き上げた網には色んな種類の魚がかかっており、大物や高級魚がかかっていた時には祖父は煙草を咥えながら嬉しそうに笑っていた。
その笑顔を見て祖母も網から魚を外しながら嬉しそうな顔をしていた。
日焼けした、シワの刻まれた顔はどこからどう見てもおばあちゃんだったが、綺麗な笑顔だったなぁと今でも思う。

家から徒歩5分くらいの所にムーンビーチ井ノ浦という海水浴場があって祖母は夏休みの間毎日私をそこに連れて行ってくれた。私が小学校に上がる前はまだムーンビーチは整備されておらず、緑がかった石がゴロゴロしているような海水浴場だった。私はその緑の石が好きだったが、気づいた時にはムーンビーチの砂は全部サラサラの砂になっており、両サイドには白いテトラポットが積まれ、一気に人工的な雰囲気になったのだった。

ムーンビーチ井ノ浦も好きだったが、山の上にある整備されていない岩がゴロゴロしている海も私は大好きだった。サメ出没。遊泳禁止。という立て看板が置いてあり、子供心に内心怖いなあと思っていた(そこでは泳がず磯遊びしかしていません)めちゃくちゃ大きな岩がゴロゴロしていて、波打ち際にいくと岩にトコブシという鮑の小さいやつみたいなのが沢山居て、それを剥がしてバーベキューでバターと醤油で食べたらとてもおいしかった。今考えるととても贅沢な体験をさせてもらったなぁと思う。バーベキューを企画してくれた叔母さん(母の妹)にとても感謝している。

ある時は、私と弟、父、母、叔母三人、従兄弟2人で祖父の船で少し遠出して小さな砂浜に行った。
父は「プライベートビーチや」と笑いながら言っていた。
砂浜から離れた沖で浮き輪のまま飛び込み、砂浜まで泳いだ。
私は小学校4年生くらいだったが、サメがいるかもしれないと思って怖くてめちゃくちゃダッシュで砂浜まで泳いだ事を記憶している。
子どもたちが磯遊びをしている間、大人はバーベキューの用意をしてくれていて、父は砂浜から投げ釣りで大きな黒鯛を釣ってくれた。
それをご飯と一緒に炊いて鯛めしを食べたのが一番の思い出かもしれない。
外で食べるご飯って美味しいけど、そのロケーションや一緒に食べていた人達の楽しさも相まって凄い鮮烈に脳裏に焼きついている。

またある時は祖父母が所有している山の一部にみかんを取りに行ったりもした。祖父は伊予柑がんまいけん(方言。美味しいから。という事)と言ってちょっと酸っぱめの伊予柑を私に渡してくれた。
少し薄い黄色の伊予柑は厚い皮を剥いだらみずみずしい実が出てくる。
温州みかんも好きだったけど、私は伊予柑の味が好きで、愛媛に行ったら必ず伊予柑のジュースを買ってしまう。今は品種改良されてもっと美味しいみかんも増えている。中でも虜になったのは紅まどんな。
果肉がみずみずしく皮が薄くゼリーを食べているよう。だけどゼリーより美味しい。
SNSで見かけたけどちょっと良いお寿司やさんのデザートとしても提供されていた。
ほんっとうに美味しいので食べたことない人は、是非食べてみて欲しいです。




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